請求の趣旨及び原因(訴状抜粋1)

 

第1 請求の趣旨
 1 被告らは、被告吉本興業株式会社の株主総会において、原告らの同意なく、原告らの株主権を喪失させる「普通株式とは別の種類の株式を発行できる旨の定款変更」、「発行済の全ての普通株式に全部取得条項を付す定款変更」の議案を付議してはならない。
 2 被告吉本興業株式会社及び被告吉野伊佐男、被告大﨑洋、被告中多広志は、原告らそれぞれに対し、各自金1万円を支払え。
 3 訴訟費用は被告らの負担とする。
 との判決ならびに第2項についての仮執行の宣言を求める。
 
第2 請求の原因
 はじめに
(1) 吉本興業株式会社は、関西から笑いの文化を生み出した企業であり、上場後、これらの笑いの文化が好きな庶民達によって育ってきた企業である。その笑いの文化を愛し育ててきた多数の個人株主から、その株主の地位を、大手メジャーのテレビ会社やファンドに言わば「身売り」するのが、今回の「TOB」の姿である。このスキームを計画し、大手テレビ会社などに持ちかけたのは吉本の経営者たちである。彼らはその後も買収会社の役員として残り、1億円の範囲内で報酬が約束された、いわば形を変えた「MBO」(マネジメント・バイ・アウト)でもある。
(2) 吉本の役員らは、2005年に吉本の子会社でコンテンツ配信会社である株式会社「ファンダンゴ」を上場させ、巨額のカネが入るや1年半後に非上場にし、再度、吉本の子会社にした。この結果、吉本関連の企業のカネの流れはより不透明になった。今回のTOBによる上場廃止によって、吉本のカネの流れはより一層不透明となる。
(3) 最大の問題は、現経営者らがテレビ会社やファンドと提携し、「TOB」に賛同しない株主から、1株あたり1350円のカネでその地位を一方的に剥奪しようとしている点である。このような吉本のような笑いの文化を愛し、好んできた個人株主の地位を、カネを払えばよいのだろうと、全部取得条項付種類株式制度などを乱用して、一方的に剥奪しようと計画した現経営者らの行為が許されるのかどうかを問う裁判である。
2 同時に、この裁判は、上場企業の役員達がファンドなどの公開買付会社と共謀し、当該企業の既発行の少数株主の地位を剥奪することが許されるかどうかを問う裁判である。吉本に限らず、MBO(マネジメント・バイ・アウト)のあり方を問う裁判でもある。
 
次へ
提訴の主旨、訴状について
トップへ